安倍首相が議長の働き方改革実現会議や、同一労働同一賃金の実現に向けた検討会の動きは、同一労働同一賃金ガイドライン案の公表によって一区切りがつき、今後、民間、労使での取り組みが本格的になるでしょう。
また、無期転換ルール対応もタイムリミットが近づいています。
大きな方向として、正社員と非正規の格差を是正し、働く人たちがワーク・ライフ・バランスを実現でき、企業が優秀な人材を確保・定着できるために、労使双方のニーズに合致した多様な働き方の実現に進んでいくように思えます。
ガイドライン案を踏まえた取り組みや均衡待遇を図るには、職務分析・職務評価、多様な正社員導入・無期転換ルール対応などが重要です。
当事務所代表社労士は、職務評価コンサルタント、多様な正社員・無期転換ルール対応支援コンサルタント、介護雇用管理改善サポーター(アドバイザー)など、厚労省等の委託事業でコンサルタントを務め、のべ100社以上の相談・支援の実績があります。
また、日本人事技能協会認定人事コンサルタントの資格を持ち、「やる気と能力を引き出す人事。」をモットーに、人と組織が戦略的に機能する人事制度づくり、運用をサポートしています。
厚労省では、無期転換ポータルサイト、パート労働ポータルサイト、短時間正社員制度導入ナビ、働き方・休み方改善ポータルサイトなどを用意し、情報提供していますので、ぜひご活用ください。
また、「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会中間報告(平成28年12月)」の抜粋を紹介します。【編注・小見出しは、筆者がより内容を的確に示すと思われる文言に一部変更】
同一労働同一賃金の実現に向けた検討会中間報告(平成28年12月)
●ガイドラインの考え方と適用に向けた民間の取り組み
(基本給、手当等を含む)広い意味での待遇をどのように決めているかを、明確にしていくことがまずは求められる。
賃金(もしくは賃金を含む待遇)をどのように決めているかをできるだけ客観化して、透明性のある形で提示できるようにして、正規・非正規の間でできるだけ比較できるようにしていくことが重要である。
その点では、賃金決定の明確化に加えて、個人の納得度を高める方策も必要となってこよう。具体的には、企業側の説明責任の強化などであるが、それに対応する形で個人側にも相応の知識や心構えをつくっていくことも必要となる。
●職務分離を起こさないようにする
ガイドラインをつくっても適切に運用がされず、非正規社員に対して、形式的に違った職務を割り当てる形でガイドラインを形式的に守ろうとする動き(いわゆる「職務分離」の動き)が広がってしまうおそれがある。
そうなると、かえって非正規社員が低い待遇を与えられたり、職を失ったりして、結果として待遇がむしろ悪化してしまうことにもなりかねない。このような職務分離等を起こさないようにするためにも、上で述べたように、民間側での実効性ある体制づくりと併せて、ガイドラインを具体的に定め、適切な時期に発効させていくことが求められる。
●手当を優先的に
具体的に取り組むにあたっては、比較的決まり方が明確であり、職務内容や人材活用の仕組みとは直接関連しない手当に関しては、比較的早期の見直しが有効かつ可能と考えられる。基本給と手当の区別が明確でない企業も存在することから、その点に関する明確性確保等の対応が民間側に求められるが、早期に実現させ、非正規社員の待遇を改善させていくことが望ましい。
●生産性向上等を通じた待遇改善の視点、日本的雇用慣行自体の変化も見据えた制度設計
非正規社員の待遇については、キャリア形成や能力開発が重要であり、生産性向上等を通じた待遇改善の視点をもっと取り入れていくべきである。役職、職種等による待遇差の改善は、キャリア形成や正規社員への転換に対する支援政策によって実現していくことが重要だからである。また、日本的雇用慣行自体が、今後大きくかつ急速に変化していくことも考えられる。それらの変化も的確に見据えた、制度設計の在り方が強く求められる。
●すべて様々な雇用期間や労働時間の社員という考え方へ
正規・非正規という呼称格差を改め、すべて様々な雇用期間や労働時間の社員という考え方に整理されていく必要がある。今回のガイドライン作成は、そのための大きな一歩にしていくことが期待される。ただし、もちろんそれだけではなく、正規社員の働き方も含め、より大きな全体の働き方改革を通じて、すべての人が、より良い働き方が可能になるような制度設計がなされることを期待したい。